次に見えてきたのは、アメリカで農業を営んでいる父親と息子の姿だ。
畑を耕している父親からは、「勉強なんかいいから、家業を手伝え」、という息子に対しての思いが伝わってくる。
息子からは、「もっと勉強したいがその自由がない」、という思いが伝わってくる。
息子のフォローでもするのだろうとかと私はなりゆきを見守っていたが、
私の体は、父親のもとへ向く。
みえない ”声” がまた言った。
「口をついて出た言葉を相手に伝えなさい」
私のマインドは、「この父親を説得した方がいい」と言っていた。
しかし私の口がこう言った。
「大変ですね、お疲れではないですか」
それと同時に、一瞬にして現実の私のバイブレーションが変化した。
この父親に、ただ、おだやかに心が寄り添っていた。
父親は、私の言葉に、驚いたようなヾ(≧Д≦)ノをした。 あ、間違えた、
父親は、驚いたような顔をした。
「そんなねぎらいをもらったのは初めてだ。
みんな、息子を勉強させてやれだの、好きにさせてやれだのと俺を責めてばかりいる。
俺は小さい頃から働かされてばかりで、勉強なんてさせてももらえなかった。
そう言うとみんな、だからこそ自分の息子には自分ができなかったことをさせてやりたいと思うもんじゃないのかって、言いやがる。そんなの綺麗事なんだよ。現に、こうやって家族全員で働かないことには、食べていけないんだから。 」
父親は、心の内を一気にまくしたてた。
私は、父親の話を聞きながら、なおも寄り添う心のありようを感じながら、
「そうですね、大変ですね。これまではお父さん一人で大変でしたね」
と耳を傾けている。
「そうなんだ、これまで俺は自分を犠牲にして家族の為にずっと頑張ってきたんだ。これまで、必死で働いてきた。本当に大変だったんだ。でも本当は、俺だって自分の時間がほしかったんだよ」
父親の目に涙が浮かんだ。
私はうなづくばかりだ。
しばらくそうして話し切ると、父親はエネルギーが澄んだようになった。
「ありがとう。話を聞いてくれて。なんだか楽になれたよ。
俺がほしかったものは、息子の手伝いじゃなくて、ねぎらいの言葉だったのかもしれない」
その言葉は、現実の私を驚かせた。
「ねぎらいの言葉がほしかった」
その父親の言葉は、なぜだか、私の心をゆさぶったのだ。
立ち上がった父親は、私に黄色やオレンジや赤の液体の入った小さな瓶を差し出した。
「お姉さん、これを飲むといいよ。
俺や息子はこれを飲んでいるから、体力だけには恵まれているんだ。
これを飲めば、エネルギーに満ち溢れる肉体になる」
私は、その瓶を受け取ってお礼を言った。
次にその親子の数年後の世界に飛ぶ。
アメリカの大学で博士号をとり、その帽子をかぶりながら卒業証書を持つ息子が、父親の肩を抱いている。
息子も父親も、満面の笑顔だ。
その笑顔に、私のハートが共鳴した。
現実に戻ってきた私は、瓶を飲み干す。
元気になる、という例の液体だ。
クンダリーニがやさしい精妙なエネルギーで震えだし、体内でエネルギーが活性化していくのがわかった。
ついで、頭頂部のチャクラから、天のエネルギーが貫いていき、高い波動に覆われ、大きなくしゃみが出る。
不思議なことに、この日から私の肉体が変化していた。
心臓の脈打ちが力強くなり、全身の血流が「いまここに生きている」と言っているようだった。
私はつい先週、別の人から、『このヴィジョンと全く逆の父親の話』 を聞かされたばかりだ。
この父親も、子供の頃にあまり勉強させてもらえなかったという。
違ったのは、「自分ができなかったからこそ、自分の子供にはさせてやりたい」という思いが強かったこと。
だがその思いが強すぎるために、毎日のように「勉強しろ!」と小学生の子供を怒るようになり、
相談してきたその女性は、そのやりとりを聞いているのがつらい、と話していた。
その子供はつい最近、中学受験を終えたばかりだった。
しかし、「この時期こそ、大切なのだ!」と父親は言う。
「この時期に塾に通ってしっかり勉強しなければ、せっかくいい中学に入学してもついていけなくなる」と。
私は、胸が苦しくなった。
子供は叱られても勉強しなくなり、一日中ゲームをしているそうだ。
ついには子供が口を聞かなくなり、「早く家を出たい」と口走るようになったという。
「私も少しほっとさせてやりたいと思うんだけどね」
そういいながら、話していくほどに、彼女の信念は違うことを語っていた。
「いい大学に入ればそれだけ選択肢が増える」
「私の会社でも、今幹部になれているのは全員○○以上のレベルの大学の人だけ」
「夫の言うとおり、この時期が大切だって、たまたま開いたお受験の本に書いてあった」
なるほど、と引き込まれそうになってはいけない 笑
ソースの観察意識は、
「なーんだ、あなた自身がそう思っているから、その世界をみているのね」
となる。
もしも、
「この時期に新たに塾に通ってしっかり勉強しなければついていけなくなる」
と思っているならば、そのとおりにするのもいい。
その信念のとおりに、現実は作られていくからだ。
失敗しない方法は、本質に気づくか、現実をがんばるか、だ。
「受験合格おめでとう」と子供に声をかけたら、
「学校に入って勉強ついていけるかどうか、不安なんだ」
と言った。
さて。
この家族でさえも、私が作り出したホログラムだとしたら、
私自身があのビジョンで教えられたことは、なんだったろう。
問いかけのあと、内にやってきたのは、
あの父親に寄り添っていたときの、おだやかな神意識だ。
この日、私はこの女性と「若くして亡くなった子供の両親の話」を一緒に聞いた。
「ただ子供がそこにいてくれることの大切さを思い出し、抱きしめてあげてください」
というメッセージだった。
この話に至るために、二人の間に、たくさんのシンクロニシティがやってきていた。
天が、あらかじめ用意していたシナリオだ。
すべては、起こることが起きていく。
説得も、同情も、苦しみへの共鳴も、必要ない。
この家族の心に、私はただおだやかに寄り添うことにしよう。